冬言響 / 日記

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冲方丁『OUT OF CONTROL』

冲方丁の短篇集。『天地明察』の原型となる「日本改暦事情」という話が収録されていることに惹かれて買ってみたのだがそれ以外の 6 編が見事に俺の好みから外れててもんにょりしてる。ホラーとか楽しむ回路が全く未搭載です俺は。

で、「日本改暦事情」。プロットはだいたい『天地明察』と同じだけど短編なので主に登場人物がだいぶ削られてる。というか「日本改暦事情」にいろいろと肉付けしたのが『天地明察』なわけなのだけど。北極出地メンバーで名前が出るのは伊藤重孝だけで建部昌明もまるまるカット。村瀬塾関係者も出ない。神社での算額奉納ではなく立て札を使った数理試しで算術家同士が勝負をしていて関孝和とはそっちで色々関わる。嫁も出ない。あとは『天地明察』では関孝和への出題やら何やらが具体的に描かれてるけどこっちでは「出題した」ってことが書かれてるだけで具体的な設問の内容は読者には示されない。などなど。まあ忙しいひとのための『天地明察』ってカンジで『天地明察』と同じく面白かったす。

ところでこの話は日本 SF 大賞受賞記念で SF 小説誌に発表されたのだけど別に SF じゃないよね、でも 時間をどう把握すべきか、天空と地上の関係といったテーマを含んでおり、タイムトラベルや宇宙旅行などを描いてきた SF ジャンルと親近性がなくはない とか巻末の解説に書いてあったけど、いや、無いだろ。認めろよ。或いは最初から触れるなよと。ひょんなことから江戸時代にタイムスリップしてしまった未来人・渋川春海がそのタイムラインでは宣明歴がそのまま使われていて色々将来的にマズいことが発生することが判ったので未来人であることがバレないようにしつつこの時代の限られた観測技術でどうにか正しい暦を作って未来を修正するために東奔西走するのダ! みたいな話だったら SF かも知らんけど。無理か。

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