冬言響 / 日記

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小説とかで台詞の途中で改行する場合の処理についてのこと

“What do you mean, you've never been to Alpha Centauri? Fo(略)at's your own lookout.
“Energize the demolition beams.”

『THE HITCHHIKER'S GUIDE TO THE GALAXY』の一節。一連の台詞の途中で改行されてるのだけど、右括弧で閉じずに改行して改めて左括弧で開始して、最後まで行ったら右括弧で閉じている。

最初にこのテの書き方を見たのは E・E・スミス・著、小隅黎・訳の『銀河パトロール隊』。

「かけたまえ、諸君、そし(略)椅子の肘掛けからとりたまえ。
「いやいや、罠をかけたりはしないよ」

同じく右括弧無しで改行して次の行を左括弧で始めて最後に右括弧で閉じてる。これで 1 人の人物による一連の台詞。最初見たときは良く判らんかった。校正ミスか何かの類かと。でもあちこちで当然のようにこんな書き方されてたので、まあこういうもんなんだな、と。たぶん原書もこんな具合になってるんだと思う。

日本語の場合普通はこういうことしないよな。改行した場合は地の文と同じように一文字開けて書き出して、最後に右括弧というか縦書きだったりする場合は「右」じゃないのだけどとにかく括弧で閉じる。つかそもそも台詞の途中で改行するなと。長くなる場合は適当に区切って地の文で情景描写とか挟んで一呼吸置いてから改めて書き出せと。

まあ俺がこれまで読んできた日本の小説は半分ぐらいラノベなのでもっと広い視野で見た場合にどうなるのかは判らんが。手元にあった夏目漱石『こころ』とかパラパラめくってみたけどそうそう都合良く「台詞の途中で改行している」箇所てのは見つからんかった。長い台詞で構わずだらだら続けてる箇所はあったけど。

翻訳ものも主に SF をいくつか読んできたけど、小隅黎・訳の「レンズマン」シリーズ以外にこういう体裁をしているものは無かったと思う。断言して良いか。無かった。

最初に挙げた文が邦訳版の『銀河ヒッチハイク・ガイド』ではどうなっているかというと、同じシーンの安原和見・訳ではこんな具合になってた。

「ばかな、アルファ・ケンタウリに行ったことがないだと? ば(略)には気をつけておくべきだったな」
「破壊光線作動」

右括弧で閉じて改行して左括弧で始めてる。別々の人物が喋ってる訳じゃなくて一連の台詞なのに。これじゃあ 1 行目と 2 行目は別々の人物が喋ってるものと扱われる気がするんだが。一応喋りかけてる相手は改行位置で切り替わってるけど。これはこれでどうなんかなあ。翻訳文だから勝手に地の文とか挟む訳にもいかんだろうから、ここは小隅黎方式のが妥当な気はするんだが。うーむ。

とまあそんだけの話。